2017年04月11日

独歩哀情

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 夏目漱石がビートルズはならこの人は…そうだな、キンクスだろうか…。

 国木田独歩のことである。

 作品集「武蔵野」(岩波文庫)を購入したのがちょうど一年前。4月28日・木曜。東武東上線・志木の駅ビルの「あゆみBOOKS」志木店にて購入と家計簿には残る。税込み712円なり。

 全278ページ、収録全18編、そのすべてが短編である。ちなみに表題作『武蔵野』は小説ではなく紀行文とも異なる。随筆と書けば随筆なのだろうが、作中に煙草をくゆらし眉間に皺を寄せ辞書を首引きにして机に向かう独歩はいない。少なくとも自分には想像がつかない。

 浮かぶのは、見えるものすべてに視野を広げ聞こえる音すべてに耳を澄ませ自然への認識を高め愛情を深め精神を浄化させていく散策中の独歩だ。ここでは行動と執筆が完全に一体化している。その場その場の情景を表すのに最も適した表現を“浄化された精神”がその場その場で紡ぐ。今では死語になった言葉もその中で実に適切に使われ新鮮味を帯び、文節の繋がりも流麗で完全に一つの世界が構築されている。文章によって描かれた“武蔵野”絵画。『武蔵野』はそんな特異な作品である。

 独歩は、机上から大自然について書くのではなく市井の自然に身を置き自然を愛でる。その“愛”が言霊を導く。そして、その“愛”の中には確かな“哀”が息づいている。だからこそ余計にいとおしい。まさにキンクスである。

 2014年8月2日・土曜。勤め帰りに「もつよし」の暖簾をくぐる。酒は、黒ホッピーセットの中いちおか(わり)・バイスサワー2杯。つまみはもつ刺し7点盛りにタン刺し。串焼きメニューからつくねをタレでナンコツとカシラを塩でそれぞれ2本ずつで締めて3,718円なり。

 今日のお題は“独歩哀情”にする。独歩の作品には“哀情”という単語が度々使われる。なんとも美しく、素晴らしい言葉ではないか。
posted by 彦左小路郎 at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする