2014年11月10日

内野ビル

 昼の12時。それが今の仕事の始業時間である。終業は曜日によって夜11時を過ぎてしまうこともしばしば。まぁ、ナイタイ時代から体内時計が完全に夜型化している身ゆえ、このシフトはかえってありがたかったりする。自分にとって早寝早起きほど辛いものはないのだからして。

 6月9日・月曜。今夜も夜11時過ぎに終業のタイムカードを押し、職場から最寄りの地下鉄・新富町駅まで歩き有楽町線に乗った。同線は、急行も準急もないまがうかたなき“こだま”状態。地元まで優に1時間半はかかる。つまり、東武東上線・みずほ台駅にたどり着いたころにはすでに日付が変わっているということである。

 午前0時30分。車内からみずほ台駅のプラットホームに出て、駅のトイレで用を足し手を洗うついでに鏡を見る。いつもその瞬間に出るのだ、今まで溜め込んだ1日の疲れがどっと…。職場におけるネガティブな出来事の数々が脳裏を駆け巡る。葛藤・自責・逡巡・悔恨…。そんな気持ちのまま帰宅する気になどとてもなれず、さりとて、こんな時間に暖簾を掲げている呑み屋などない。

 そういうときにありがたいのが駅西口最寄りにそびえる内野ビル。1Fのマクドナルドが目印の同ビルは、その他にもスナックやショットバー・カラオケバー・キャバクラに韓国エステ等などが軒を連ねる複合レジャー施設である。とんかつ屋にラーメン屋・和食屋など昼飯時に重宝する飲食店も多数テナントに入る、近隣住民(特に男性)にとってなんとも頼もしい存在なのだ。

 幅広く奥行き十分なこのビル、マクドナルドの右隣りにはラーメン屋「くらら」がある。自分は、そのまた右隣りにあるやはりビル内の細い通路を入る。さっきも書いたように、通路を挟んで、様々な呑み屋・飲食店が袖看板や暖簾を掲げる。この中の一軒が「福ちゃんラーメン」。ママさんが基本一人で切り盛りするこぢんまりとした中華料理専門店であり、近隣のバーやキャバクラで遊んだ客の“しめ”に対応すべく午前3時まで営業を続けている。

 引き戸を開ける。正面の厨房を囲んで逆“コ”の字口カウンターが連なる。カウンター奥には小上がり(小座敷)もある。自分は、この小上がりがお気に入りで空いていれば必ずそこに座る。カウンターからではどの位置でも視界に入ってしまうテレビがここだと完全に死角になっているからだ。浮世の憂さを晴らすための酒席に浮世の垢をまぶそうとするテレビは要らない。ピンで呑むときはあくまで自身と向き合う。それが僕の流儀である。
 
 深夜である。これからやって来るであろうバーやキャバクラ帰りの酔客もいない。場内は閑散としている。靴を履いたままたたき(通路)に足を投げ出し、小上がり(座敷)に腰を下ろし、壁にもたれ、背後から聞こえるテレビの音声をラジオ代わりにつまみを晩飯代わりに酒を呑む。やがて、葛藤も自責も逡巡も悔恨も酔いにまぎれほぐれ溶けて消えてゆく。少なくともその場に居るときはそう感じられる。ネガがポジに反転する。時折交わすママさんとの会話がまたいい肴になる。仕事疲れを癒してくれる。

 酒は中瓶ビール1本・角ハイボール2杯・ホッピーセットの中いちおか(わり)。つまみは餃子・ピータン・手羽先。締めにチャーハンセットを頼み総額3,190円なり。

 今日のお題は“内野ビル”にする。
posted by 彦左小路郎 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 埼玉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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